隣の息子さん流、奇麗な木製ストックの作り方
私のスリングライフル一番の売りは木製ストックだと断言できるでしょう。
今回は私がどうやってこのストックを作っているか、制作ノウハウ全放出させてもらいます。
1.素材
ホームセンターでストック用の木材を選ぶのはあまりおすすめしません。ホームセンターで手に入るのは基本的に杉や檜、松材といった建築用の針葉樹材です。
柔らかすぎるんですよ。爪で軽く押すだけでへこみが付きます。
桐なんかもありますが、あれもダメ。とにかく柔らかい木材はストックに向きません。
実銃には強い反動がありますから、あんまりスカスカな木材使うとグリップのとこで折れちゃうんですよ。ストックに向いてるのは成長の遅く緻密な広葉樹材、ぶっちゃけウォルナット材です。イングリッシュウォルナットとかアメリカンウォルナットなんて種類があります。ウォルナットとは胡桃のことですが、一般的に胡桃材と言うと日本の鬼胡桃のことで、ウォルナットとは別物です。ウォルナットは乾燥しても変形せず、粘り強いので強烈な反動のある実銃には最適なのです。なによりオイルだけで深い茶色に発色し大変美しいです。
これは現在アメリカンブラックウォルナットで制作中のストックになります。
ただ、スリングライフルの銃床として考えると少々オーバースペックではあります。反動ありませんからね。スリングライフルには。素材自体めっちゃ高価ですし。このストック切り出せるウォルナット材が1万円前後しました。あんまりランク高くないウォルナット材ですらこれくらいします。グリップエンドとフォアエンドの黒いとこは黒檀材になってますが、これもたっかい。
しかも銃床にするにはフレームやマガジンを収めるための溝掘り作業があります。
溝掘りにはフライス盤やトリマーなんかの電動工具、高いノミの技術が必要になります。
一枚板でストック作る上で一番難易度高いのはこの溝掘り作業でしょうね。
で、この溝掘り作業をなくせる手法として私が使ってるのはホームセンターで買える2.5mm厚のラワン合板を何枚も積層して作るラワンラミネートです。フレーム埋め込み用の溝や穴を掘らなくても積層時に切っておけばいいので、フライスやトリマー持ってなかったり、ノミでの溝掘り技術が無くても作れるので相対的に楽です。手間は掛かりますし、銃身とかパイプの収まる曲面のある溝を作るのは苦手ですけど。
こんな感じ。奇麗に溝掘らないとフレーム組み込んだ時にぐらついたりするので、積層時に1枚ずつフレームに合わせながら作れるラミネートストックがおすすめです。
合板を買いましょう。
2.造形
素材決めたら次は実際に形状を決めて切り出し削り出していきましょう。
ストックを作るには実際にエアガンなんかのストックを観察し、どこが凹んでいてどこが膨らんでいるのか、なんのためにその凹みや膨らみがあるのかといった事を把握しましょう。
私は観察のためにこれだけ集めました。
……あくまで観察のためです
例えばこの黒丸の部分は画像だけではどのように削られているのかちょっと分かりにくいので、実物やミニチュア、ぐりぐりいろんな角度に動かせる3Dモデルなんかを見て作るのをお勧めします。
ミニチュアとか3Dモデルなんかは実際に握れないのでやっぱり実物握って構えてみるのがいいです。高いですけども。
私はVSR-10を見ながら作りました。
木材からの切り出しにはジグソーやバンドソーがあるとのこぎりだけで切り出すのの万倍楽です。
削りはシントーのノコやすり、半丸の鬼目やすり、カンナ大小があれば大丈夫です。
ノコやすりで大まかに形を整え、カンナで直線を成形し、凹み部分は半丸のやすりでえぐっていきます。
ベルトサンダーとかディスクグラインダーも便利ですが、削りすぎることが多々あるので自分はあまり使っていません。
削る際、左右対称にしたいけどどれだけ削っていいかぱっと見よく解らないってことがあると思います。そんな時ラミネート材は同じ厚みの層が均一に並んでいるので、縞模様を等高線のように使って左右の削りを均一にすることができます。便利!
3.研磨
造形が終わったら紙やすりで表面を均していきましょう。自分は240番→400番→水溶きとの粉刷り込みながら1000番で仕上げていきます。
紙やすり掛ける際は紙やすり装着できるグリップに装着すると奇麗に平坦に削れます。
水溶きとの粉は木の導管の穴や細かい凹みを埋めることができます。化粧でいうとファンデーションですね。導管埋めることでとてもつるつるな手触りになります。ただ、あんまりとの粉使いすぎると木目やラミネートの等高線が消えてしまう厚化粧状態になるので、塗るのではなくあくまで刷り込むイメージです。薄化粧で素材を活かしましょう。
実は最初の画像のストックは少し厚化粧状態です。
等高線が消えかかっている部分があるのわかりますかね?
4.表面処理
との粉と細かい番手の紙やすりでストックをつるつるにしたら、最後にウレタンニス塗装もしくはオイルフィニッシュで仕上げて完成となります。
ウレタンニス塗装はツヤテカ、オイルフィニッシュはしっとりすべすべって感じに仕上がります。
一枚板なら亜麻仁油や亜麻仁油がちょっと固まった状態であるボイル油を1500番以上の紙やすりで刷り込みながらのオイルフィニッシュで仕上げるのが良いです。
オイル自体には色がついていないので、発色は濡れた木と同じになります。事前に端材を濡らしてどんな色になるか確認しておきましょう。実銃の木製ストックがこげ茶色なのは濡れたウォルナットの色であり、こげ茶色の塗料やニスを塗ってあるわけではありません。(安物を除く)
また、ウォルナット以外でもオイルだけでこのような色に仕上がる木材もあるので、実際に濡らして確かめるのは重要です。
こげ茶色以外に着色しつつオイル仕上げしたいときはワトコオイルという亜麻仁油に塗料混ぜたものを使うとよいです。
こちらはマホガニーのワトコオイル塗った後乾かして亜麻仁油塗って仕上げてます。
ラミネートストックの接着剤部分にはオイルが染み込みにくいので、ワトコオイルなどでは接着面近くは色が薄くなりがちです。
更にラワン合板自体も色が薄いので、あまりオイルフィニッシュに向きません。
(赤茶色との粉+亜麻仁油によるオイルフィニッシュ。ウレタンニス仕上げのラミネートストックに比べると色味が薄くぼやっとした印象を受ける)
そのため、ラミネートストックはウレタンニスで仕上げることになります。表面をよく乾かし好きな色のニスを薄く塗って、乾いたら1500番以上で磨いて仕上げます。
こちらも塗りすぎると厚化粧状態になって木目や等高線が消えるので、薄化粧を心がけましょう。
「ニス薄くすると好みの色にならない!」って場合は、との粉を刷り込む段階で色付きとの粉を使うと良いです。
(ラミネートストックでのオイルフィニッシュとウレタンニス塗装の比較。上がオイルフィニッシュ、下がウレタンニス。ウレタンニスのほうが奇麗に見えるが、ニス仕上げは持った感触が学習机っぽく木材のしっとり感がない)
いかがでしたか?
奇麗な木製ストックは一朝一夕に作れるものではありませんが、この記事が皆様のストック制作の一助となれば幸いです。がんばれ。